牛首紬
牛首紬の織り方は独特で、ねじり糸を使うことで独特の模様や風合いを生み出します。このねじり糸が特徴的な牛首紬の表情を作り出します。絹織物特有の軽さと滑らかさがあり、肌触りが非常に優れていて、絹の特性を活かした美しい光沢があり、上品で高級感のある仕上がりとなります。また、絹の持つ耐久性と通気性も備えており、着心地が良く長く愛用できる生地です。
牛首紬の生産地である白山市白峰(旧牛首村)は、石川県の東南に位置し、福井県勝山市や岐阜県白川村などに隣接した山村で、加賀平野を貫く手取川の水源に位置し、霊峰白山の豊かな自然環境の中にあります。
牛首紬の名前は、明治の初めまで白峰が守護神「牛頭天王(ごずてんのう)」に由来して牛首村と称したことに始まります。日本有数の豪雪地帯として知られる白峰村一帯は、山間の急峻な地形から農耕に適した平地が極端に少ないことから、古くから養蚕が貴重な現金収入の手立てとして盛んに行われていました。二匹の蚕が共同でつくる珍しい「玉繭」を利用して織られたのが、牛首紬です。
二頭の蚕が共同で一個の繭を作り上げたものを「玉繭」と呼びます。牛首紬はこの「玉繭」から生まれます。牛首紬にとって最も重要な工程、それは玉繭から糸を挽き出す玉糸づくりです。玉糸を挽き出す「のべ引き」作業は、玉繭から出る2本の糸が複雑に絡み合っているため、糸づくりが難しく、あくまでも職人の経験と勘に頼らねばなりません。しかしながら、この難しい作業によって挽き出された玉糸は、弾力性・伸張性に優れ、牛首紬の全ての風合いの根本となっています。
その後の作業は「糸にとって理想的な状態」であることに重点をおいて進めます。これらの糸づくり作業が、身体に馴染む着やすさ、通気性の良さ、そしてシワになりにくいなど牛首紬の優れた風合いの根本を担っています。