安川 万里子

白磁「纏い」シリーズはろくろで成形した白い磁器土に「いっちん」という絞り出しの伝統技法で施した彩色作品。

「いっちん」とは細い先金がついたスポイト状の道具から泥漿を絞り出して描く技法の事です。

 

 

この作品は小さな丸や三角、四角を一定の法則で連なるように配列しています。

ろくろで成形した器の全体に隙間なくいっちんを施す事で、器が織物やアクセサリーを纏ったかのような仕上がりを目指しました。

 

 

本作は人々の記憶や妄執、祈りを連ねて身に纏い、広がって行く世界を表現しています。

作者は沖縄県で陶芸を学び、東京にて制作活動を続け、現在の磁器作品に辿り着きました。

 

 

磁器とは、吸水性が低く、硬度が高く、高温で焼成された陶磁器の一種です。

主原料に陶石を用いており1200度から1400度程度で焼かれています。

元々は白磁に同じ白い泥漿でいっちんを施し作品に陰影を出す事を目的としていました。次第にその拡がる模様に意味を見出し、このいっちん技法によって空間や時間を表現したいと思うようになりました。

伝統技法を用いて丁寧に作品作りに向き合い、「見る人々其々の情景を呼び起こす」べく日々努力しています。

また近年は下絵具や無鉛上絵具の焼き付けによる彩色に力を入れており、限りなく淡い独特な存在感の色彩の研究を続けています。

一見無釉にも見える作品群ですが、殆どの作品につや消しの釉薬が施され、コーティングされています。

 

                                         


 

略歴

2003 沖縄県立芸術大学大学院陶磁器専修  

修了後、同大学教育補助嘱託員

2005 同大学非常勤講師を経て、東京都古屋眞理子氏のもとで作陶

2021独立 国内で展覧会を多数行う

賞歴

2001 世界工芸コンペティション金沢 入選

2023 第3回和文化グランプリ優秀賞