磯部 光太郎
磯部光太郎は、東京藝術大学日本画科を卒業・同大学院を修了した日本画家で、自然と生き物の営みを繊細に描く作風で知られています。彼の作品は「生き物が棲息する場所」をテーマに、人間の生活圏にひっそりと共存する虫や蛙、トンボなどの小さな命に焦点を当てています。日本画の伝統的な技法を駆使しながら、細密で柔らかい筆致で自然界の一瞬の息吹をとらえ、見る者に静かな感動と生命の力強さを伝えます。


磯部の作品は、自然界に息づく多様な生命の「調和」を、単なる写実ではなく単純化し平面的に表現する点に特色があります。伝統技法である岩絵具・胡粉・金属粉を用い、和紙に繊細な筆線と柔らかな光を宿す描写で、小さな虫やカエル、トンボなどの生態を一瞬の呼吸まで感じさせるように捉えています。作品シリーズ「Biotop(生き物が棲息する場所)」では、身近な花や水辺に息づく小さな命を丁寧に描くことで、人と自然の在り方を視覚的に問いかける、詩的かつ哲学的な表現を展開しています。


磯部は神奈川県を拠点に制作を行っており、特に鎌倉や横浜近郊の自然環境から着想を得ています。庭や田んぼ、里山など身近な場所に息づく小さな生き物たちとの出会いが、彼の創作の原点です。実際にフィールドに出向き、細やかな観察を通して得られた感覚を作品に反映させています。これらの地域特有の四季や風土が、彼の作品に自然な色彩や生き物の息吹として落とし込まれ、観る人に深い感動を呼び起こします。

1994年 東京都江古田・蓮華寺の天井画制作に参加
1995年 東京藝術大学美術学部日本画科卒業卒業制作にて「取手市長賞」受賞、作品は取手市に所蔵
1997年 東京藝術大学大学院美術研究科日本画専攻 修了。京都・天龍寺の雲龍図天井画制作に参加
1998年 中尊寺金色堂 国宝復元模造に参加
2003年 狂言師・野村萬斎の長男、野村裕基の初舞台記念扇を制作
2010年 「アートアワード・ネクスト」にて審査員特別賞 受賞
2016年 絵本『あまがえる のはらへ』を出版。アート台北(台湾)に出展
2018年 ニューヨーク・チェルシーにて個展を開催
2021年 絵本『ふきのはのうえに』を出版
2023年 絵本『ふきのはのうえに』原画を制作