軽井沢彫
軽井沢彫は、長野県軽井沢を中心に受け継がれてきた木工工芸で、植物文様を浅い浮き彫りで繊細に彫刻する点が最大の特徴である。起源は明治期に軽井沢へ滞在した外国人宣教師たちの依頼で、大坂屋家具店の初代川崎巳次郎が外国人向けの彫刻を施した家具を制作したことに始まり、和洋折衷の意匠をもつ独自のスタイルが形成された。

初期の彫刻柄は、日本の伝統的なモチーフである松や竹、梅、牡丹、菖蒲、菊などが中心であった。その後、日本を象徴する花である桜柄が好んで彫刻されるようになり、宣教師の要望で彫刻したキリスト教の象徴であるぶどう柄も、桜柄と並び人気の柄となっている。
また、軽井沢彫りは、分解したり組立てたりできる構造になっている。接合部で「蟻接ぎ」と呼ばれる組手の技法を取り入れ、修理やリメイクがやりやすいメリットがある。
素材には主にミズナラやホオノキが使われ、表面に美しい木目を生かしながら、細かい線で優雅な植物模様を彫り込む。塗装には落ち着いた色調が採用され、アンティークのような風合いを持つ点も魅力の一つである。


軽井沢は長野県東信地方に位置し、豊かな自然環境と避暑地としての歴史を持つ高原リゾートである。標高約1000メートルの冷涼な気候は夏でも湿度が低いため過ごしやすい。明治期には外国人宣教師や外交官が多く滞在したことから、洋風文化が早くから根付いた。現在も別荘地として発展し、静かな森の風景、洗練されたショップやカフェ、美術館などが点在する落ち着いた町並みが特徴である。その中で誕生した軽井沢彫は、町の風土と歴史を象徴する工芸として高く評価されている。


