象彦

 

象彦は、寛文元年(1661年)創業の京都を代表する京漆器の老舗である。創業当初は漆器道具商「象牙屋」として始まり、三代・西村彦兵衛が手掛けた蒔絵額が評判となったことから「象彦」の名で親しまれるようになった。代々、京漆器の伝統技術を受け継ぎながら、茶道具や調度品、日用品など幅広い漆器を製作。現在も伝統を継承するとともに、新たな漆芸の創造を目指し、国内外へ京漆器の魅力を発信している。

 

象彦の漆器は、「用と美」の考えを大切に、日々の暮らしの中で使われる道具としての美しさを追求している。木地師、塗師、蒔絵師など、それぞれの工程を専門とする職人が分業で製作し、受け継がれた技術を結集することで、一つひとつの器が生み出される。漆を幾重にも塗り重ねた深みのある艶や、蒔絵による繊細で優美な意匠を特徴とし、伝統的な技法を守りながら現代の暮らしに調和する京漆器を展開している。

 

象彦が受け継ぐ京漆器は、京都の宮廷文化や茶の湯文化の中で育まれた伝統工芸である。他産地の漆器に比べて木地が薄く仕上げられ、繊細で優美な趣を備えていることが特徴。一方で、下地の工程では漆を多く用いるため、高い耐久性を兼ね備えている。蒔絵や螺鈿などの加飾による華やかな表現も京漆器ならではの魅力であり、実用性と美しさを兼ね備えた工芸品として、長い歴史の中で培われた京都の美意識と高度な技術が今日まで受け継がれている。